普通が理想
今回紹介する本は江國香織さんの『いつか記憶からこぼれ落ちるとしても』です。
この本は残酷で切なく、それでいて可憐な6つの物語から成り立っており、17歳の主人公が何気ない?様々な出来事に心を揺り動かされ、その様子が誰にでも分かりやすい言葉で繊細に描写されている本です。
登場人物の中には結構裕福な家庭(少なくとも金銭面においては)で、お嬢様学校に通っている人や、緑の猫に憧れる奇妙な少女など、私にとって共感出来そうで出来ない部分も多々ありまして、新鮮というか、こういう人もやっぱり存在するのかと考えさせられました。
他にも、どこか冷えた印象を与える吉田くんという少年とのなんともぎこちないデートの様子や、年上の女性に痴漢紛いの事をされて以来どうにも彼女のことが気になって仕方がない主人公の話なども収録してあります。
どの話にも共通していますが、普通な様で普通で無い、でもよく考えたらこれも普通なのか、と改めて普通とは何かと考えさせられる様な作品でもありました。
作者には恐らく、日常の生活、出来事に憧れている、つまり普通が理想的だという思いがどこかにあるのでは無いでしょうか。
こういう小説などは、普通に読み進めていくだけでは「何となく楽しかったなー」という感想だけで終わりがちですが、読み終わった後に内容を軽くでも反芻してみたり、読んで受けた印象を軽くどこかに書き留めたり、本の裏表紙に書いてある簡単なあらすじ、紹介文を読んで内容を整理するなど、読んだあとの行動次第でそこから得られる物も随分変わってくる様に思います。
私は本の読み方に正解はないと思っていますし、読んだあとの感想も千差万別で良いし、寧ろそれこそが本の醍醐味だとすら思ってます。
同じ本でも大人が読むのと子供が読むのでは全く違う印象を受けることもあります。
不倫をテーマにした作品などでは、実際に結婚して、妻と一緒に暮らしている人と、中学生では、共感する部分も違うと思います。
一番いけないのは他人の感想を丸ごと自分のものにしてしまうことです。
あくまでも他人の感想は参考程度に、自分なりに考えた感想は(たとえ読み間違えていたとしても)自分だけのものなので、大切にして欲しいとも思います。
今回は駄目でも、次の作品こそはしっかり読み取ってやろうぐらいの意気込みで、自信を持って読み間違えていきましょう。
ではまた。